叔父に追いつき、いつか飛び越えていくための、スタートとなる走り。
2022年10月23日 阪神競馬場で開催された第83回 菊花賞(GI)は、セイウンハーネスの果敢な走りで菊花賞には稀なハイペースでかつタフなレースとなりました。
ヤマニンゼストは11番人気と、前走に引き続き低評価でしたが、春のクラシックを戦い抜いたライバル達に囲まれればむしろ当然ともいえ、ファンたちの声も特に不服そうではなく、静かな熱意さえ感じさせるほどでした。ファン以上に落ち着いて見えたのが当の本人たち陣営で、肩の力の入らない、しかし充実感を漂わせるコメントが多かったように思います。コンビを組む武豊騎手は、先代の生産牧場社長が祖母マダニナを競り落とした競り市に同行し、そのマダニナで勝利したこと、またその牝系でクラシックレースに出走する感慨を語りました。管理する千田調教師は、騎手を引退し調教師に転身したときに、先代社長が牧場をともに巡ってくれたこと、また馬を預けてくれたことを語りました。そしてなにより驚くと同時に、どれだけ自然体な陣営で、だからこそなんだろうと感じさせたのが、追い切り後の千田師の「(中間は)疲れがないように努め、きょうは楽しそうに走っていました。前走のマイナス12キロは2走前が滞在競馬だったので気にしなくていいですよ」(サンスポ)でした。その背には、ここまで共に歩んだ鷲頭虎太騎手がおり、本番へ肩の力が抜け、しかし静かな熱意と期待を持たせる落ち着きでした。
これまでヤマニン倶楽部を通じて、管理人なおやも多くのヤマニンたちを応援させていただいていますが、スタートも、調整も、気性も、ペースも、馬場も、馬体重も、操作性も、あまり心配することなくスタートを迎えることができた数少ないお馬さんだなと感じたのですが、こうして改めて書き出してみると、この陣営に支えられて来たからこそなのかな、と感じます。チーム・ゼストは、こうして菊花賞・当日を迎えました。
パドックに現れたヤマニンゼストは、時折気合を見せながらも特に気負うこともなく、静かに周回を重ねていました。後ろの馬が少しうるさいところを見せていたこともあり、そのうるささが伝染してしまうのではないかと心配しながら見ていましたが、マイペースを崩すことのない周回。期待せずにはいられないものでした。
もちろん、武豊騎手が騎乗してもそれは変わらず、ヤマニンゼストの大きな個性だと感じられました。
本馬場入場も自然とこなし、この大舞台にいること、分かっているのかしらと思うほどでした。
しかし、レースはそれらとは関わりなくスタートしますし、熱く、タフなものとなりました。
最初に書いたとり、セイウンハーネスのペースは中距離レースのそtれで、多くの陣営にとって想定を越えるものだったのかも知れません。しかし、アスクビクターモアはそれに続く2番手に位置しました。スタミナ勝負で不安が少ない一頭だったことはまず間違いありません。他の有力馬たちが内ラチ沿いで控えめにレースするのと大きなち違いがありました。ヤマニンゼストは距離の不安こそ少ないものの、前走・神戸新聞杯と同じ戦法で、好スタートから進路を内ラチいっぱいに、後方待機策でのレースを選びました。
様子が変わったのは、2週目の向こう正面でした。後方待機を決め込んでいた名手は、3コーナーを待たずに外へ進路を変更すると、徐々に進出を開始したのです。今思えば当然の選択だったとも言えます。ハイペースで澱みのない流れとなり、いずれハナを切った馬、またついて行った馬が垂れてくることは自明とも言えます。その証拠に3コーナーから4コーナーにかけて、内ラチ沿いは大渋滞となり、スタミナに不安のあった1番人気馬ガイアフォースは進路を失い、多くのチャンスを潰すことになりました。名手の手綱に導かれたヤマニンゼストは、4コーナー出口に向けて進路を効率的に取ると、おそらくうまく足を溜めていたと判断したであろう前をいく馬の進路をなぞろうかと加速しました。しかし若干前とのスペースが開いたこともあり、ここに別の馬が飛び込んできたことで一瞬ごちゃつく展開になってしまうことに。そこは楽しく走るヤマニンゼスト、すぐに立て直すともがく内側の馬を見ながらその外をグイグイと加速。阪神の坂を登り切り、さらなる加速を……と思ったところが阪神芝3000mのゴール地点でした。
着順は勝馬・アスクビクターモアから1秒2差の6着。叔父・ヤマニンウイスカーの着順と同じでした。
レース後、名手・武豊騎手は、
「道中はずっといい感じでしたが、4角だけうまくさばけませんでした。もったいなかったです。あそこがうまくいっていれば、4着はあったと思います」
スポーツ報知 https://news.yahoo.co.jp/articles/e4f9b31bdf8e617c2fa6b495553a5bcaab65ed90
と語りました。勝馬たちに差はつけられましたが、力を証明する走りではなかったでしょうか?
チーム一丸を感じさせる最初の挑戦は、こうして幕を閉じました。とても気持ちの良い一線だったと思います。やっぱり走りは楽しくなくっちゃね!
ヤマニンゼストとその陣営の挑戦は続きます。またいっしょに応援していきましょう!
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