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【プロキオンS】新時代を告げるか? 新星降臨!(レース結果情報)

2024年・プロキオンステークスR2

これは歴史の幕開けか――ヤマニンウルス 無敗の重賞初制覇!


レース後、2着馬スレイマンの鞍上・西村淳也騎手は「いいスタートが切れて状態も良く(馬は)楽しそうに走っていた。結果は悔しいけど勝ち馬を褒めることしかできない」と語り、このレースの一面を語ってくれたように思われました。走破タイム 1:43.2 は例年であれば勝ち馬の時計とも言えます。前前走・アンタレスS(G3)で2着した実力馬が気持ちよく走った3馬身差先を、遊び遊び走り、土つかずの重賞制覇を飾った馬がいた――それが、われらがヤマニンウルスだったのです。

レース前、多くの人たちが懸命にヤマニンウルスの「欠点」を探していました。曰く、揉まれた競馬を経験したことがない……。曰く、砂を被る経験をしていない……。曰く、負かした馬たちが活躍していない……。曰く、一走ごとに2着馬との着差が縮まっている……。曰く、調整過程に不安がある……。
実はどれも事実を語っているので、ヤマニンウルスにとっては「そうですね」としか反駁することができないとも言えます。つまり、「走りを見守る」しかなく、その答えがこのレースに詰まっていました。

2年ぶりに小倉競馬場のパドックに姿を現したヤマニンウルスは、前走から+2kg、前回小倉(デビュー)戦からは+48kgの584kgとボリュームアップしていました。とはいえ、ここまで5走したなかでもおとなしくパドックを周回する姿は、とても聞き分けの良い賢さを感じさせました。減量させなければ――という話もよく耳にします。数字を見ているとそう思いたくなるのもわかります。ただこのおとなしいパドックを見ていると、余分な贅肉や無理に筋肉を身につけた故の馬体重というよりは、そもそもの馬格がよく、身体の形が変におかしくて、というのも感じられません。むしろ自然ないい馬体で、他馬との比較で遠近法的に気持ち悪くなるぐらい。「太っている」というよりも「馬格が良い」と感じられ、実際骨量も含めていい馬体をしている、という評価をされているようです。

斎藤崇史調教師が度々発言されているとおり、「成長途上」という言葉も、「キ甲が抜けていない」ことで判ります。
「キ甲」とは、肩の膨らみの部分です。成長すると「キ甲」がハッキリとしてきます。お尻の頂点よりも「キ甲」が低い場合、まだ成長途上にあると言われており、ヤマニンウルスが成長途上と言われるのがわかります。「キ甲が抜ける」までは前脚の方が低くなり負担が掛かりますし、クッション性が低くなってしまうので、育成方法が問われる時期とも言えます。ヤマニンウルスの走りも前傾傾向があるように見えますので、これから、というように感じます(なおやは馬を見る目がないので、たぶんそうだと思うぐらいですが)。
斎藤師は、ヤマニンウルスの調教にも変化をつけてきています。前脚に負担の掛からない坂路で追うことが多いですが、今回は坂路二本追いに変化させており、前走までと違い、ヤマニンウルスに負荷をかけてレースに送り込んでいたことになります。
順調に来ている、と語られたことが、そのひとつひとつの証左になっているように感じられます。

6枠11番からの出走となったヤマニンウルスは、五分にスタートを切ると、徐々に加速していきました。大きな馬体でスタートが苦手な馬も多い中、ヤマニンウルスは一完歩が大きく、自然と流れに乗ることができる力があります。先行することでレースを優位に運びたい6番レガーメペスカ、7番バスラットレオンを前に、外からハナを奪ったプルーサンら3頭を見ながら4番手で第1コーナーへ進入しました。3番人気に支持されていた5番スレイマンは、ヤマニンウルスをマークする位置に。2番人気9番ハピは、後方11番手でレースを運びました。
向こう正面入口残り1000m地点で早くも6番レガーメペスカを持ったまま交わし、ヤマニンウルスは3番手にあがりました。このときレガーメペスカ騎乗の田口騎手は、なんとか食らいつこうと、手綱を大きく動かしていました。
残り600mを切り第3コーナーに向かうと、馬群は一気に圧縮されていきます。ここで武豊騎手は軽く合図を送ると、徐々に加速して外から先頭を行く2頭を交わしに掛かります。4コーナー入口となる残り400mで軽くステッキが入ると、ヤマニンウルスの馬体は苦もなく先頭へ。スタンドからの完成が一気に大きくなったことが記憶に残っています。
後続各馬が必死に追いかける中、直線を向いたヤマニンウルスと武豊騎手は、悠々と走り抜けます。何度かステッキが入りますが、アクションはさほどなく、ほぼ遊びながら直線を走るヤマニンウルス。後続勢は先行していた馬たちはスタミナ切れで沈み、後続から末脚に賭けていた馬たちが着順をあげる戦いを繰り広げ、先行勢と後方待機勢が入れ替わるなか、悠々とゴール板を駆け抜けるヤマニンウルスと武豊騎手――本当に強い!
終わってみれば、前半ハイペースで飛ばした先行勢に、後半後方待機勢が強襲を掛けるというレース展開になっていた筈なのですが、終始余裕のある走りで無敗の5連勝で重賞初制覇を飾った「怪物」がそこにいるせいで、レースの厳しさが伝わってこない、不思議なレースとなりました。
最初に紹介した西村騎手のコメントではないですが、2着馬スレイマンはレースで勝ちに行っての2着であり、ハイペースのレースでしっかりと粘ってみせた実力者であることは覚えておきたいですが、ヤマニンウルスはそのハイペースのレースの中、後半は遊び遊びに走り切り、まだまだ余裕のある快勝劇のように思われました。

プロキオンステークス・レース結果
プロキオンステークス・レース結果

1着 ヤマニンウルス(武豊騎手)
「まずホッとしていますし、改めてこの馬は強いなという気持ちです。前回はあまり返し馬の感触が良くなかったので、今日はどうかなと思っていたのですが、良い感じで、乗った中では一番良い雰囲気でしたね。まだ揉まれたり、砂を被ったりという経験がないので、あまりそうならない方が良いかなとは思っていました。良いポジションは取れました。いつもそうなのですが、手応えがあるのかないのか分からないのですが、とにかく最後まで一生懸命に走る馬なので、相手に合わせるのではなく、この馬のペースで行きました。
今日がまだ5回目のレースですし、それでこの重賞レースでこの内容ですから、本当に一回ずつ馬は強くなっています。この先どこまで強くなるのかなとすごく楽しみです。(久々に騎乗の小倉は)やっぱり暑いですね。暑いなと思いましたが、馬の方は涼しそうに走っていました」

https://www.radionikkei.jp/keiba_article/news/post_32565.html

いろいろな話がレース前には聞かれましたが、どの話に対しても「ありのままの強さ」で反駁してみせたヤマニンウルス。唯一、「砂を被ったことがない」は今回も確認することはできなかったものの、持っている大きな身体の持ち味でもある「一完歩の大きさ」で、そうした位置取りにならないように走ることができるのは強みであり、この馬の強さでもありそうです。
現状のヤマニンウルスは、「テンよし・中よし・終いよし」を初重賞で見事に証明して見せ、もしかしたら歴史に名前を残す「怪物」なのかも知れないと思わせられるパフォーマンスを、余裕を持って見せてくれました。
ダート界にとっては「新星誕生」であり、新しい時代の幕開けになる一戦になったかも知れません――

プロキオンステークス・表彰式のヤマニンウルス
プロキオンステークス・表彰式のヤマニンウルス

レース後のインタビューで斎藤崇史調教師は、ヤマニンウルスの目標として12月、中京で開催されるGIレース・チャンピオンズカップを示唆しました。ヤマニンウルスの獲得賞金は、2着馬スレイマンよりも少ない現状ということもあり、「出走可能性を十分考慮」して、直行または間に1走のつもりでいるけれども、レース後の様子を最優先に判断していく、と語られていました。レース後は、宇治田原優駿ステーブルへ出されることも語られており、いよいよ飛躍の時を迎えるヤマニンウルスに、ますます期待に胸が高鳴ります。

なお、創立70周年を記念して数々のイベントが実施されているJRA。そのなかでも各競馬場で開催されている「70thサンクスデー」ですが、実は10場のうち、新潟競馬場で開催された新潟大賞典(G3)、そして今回の小倉競馬場・プロキオンステークス(G3)にヤマニン軍団が勝利! 重賞勝利の写真にはどちもしっかりと、「JRA 70th」のロゴが光っております^^

ヤマニン軍団は今年、ヤマニンサルバムの新潟大賞典(G3)に続く2つめの重賞制覇となりました。
秋へ向けて、ヤマニンウルスもヤマニン軍団も、楽しみな夏を越えることになりそうです。

(了)

2024年・プロキオンステークスR2

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