新和、静かな厩舎で――
本レポートは、錦岡牧場さんから特別なご許可を頂いております。現在、錦岡牧場さんは一般見学を中止しております。
また牧場見学を希望される方は、各牧場に問い合わせるのではなく、まず【競走馬のふるさと案内所】でルールを確認しましょう。
新和へ向かう朝――
連載再開! というわけで、大変お待たせ致しました。前回からかなり間が開いてしまいましたが、今年の9月初旬に見学させていただいてから、われらがヤマニン軍団の活躍が加速し、幸いなことに私自身の仕事も多忙となり、「今の活躍」が最優先ということでなかなか掲載することができませんでした。いつも楽しみに待ってくださってる方がいることも励みにしておりますので、のんびりとですが、出走馬がいない今週、お目汚し頂ければと思います。
さて、今年も初日から泊津から門別競馬場へ――飛行機の遅延と荒天に翻弄されるスケジュールのなか、北の大地でも競馬を楽しみながら牧場見学をスタートさせた私でした。そんな初日が嘘のように、翌朝は青天! この旅で最も多くの馬たちと会う一日のスタートとなりました。


ほぼ常宿と化しているホテルサトウさんで朝食を済ませ、8時半には出発です。今年は日高自動車道の日高厚賀IC~新冠IC間延伸もあり、時間的には少し余裕があります。とはいえ、1歳馬たちの放牧時間に間に合うよう、行程を組んでいます。

荷物をまとめてホテルを出ると、途中セイコーマートに立ち寄り、飲み物を買ってから新和へ向かいます。
例年であれば、新冠温泉の脇、左岸道路を北上し、新冠平取線(町道1026号)で新冠川を渡ると、静内警察署 朝日駐在所の交差点を右折、北海道道209号(サラブレッド銀座)を経て再度新冠平取線で北上、厚別川まで山の中を北上し、比宇厚賀線(北海道道208号)をさらに北上し新和へ至る、というルートをたどってきました。
今年は国道235号を新冠町へ向かい、日高自動車道新冠ICに入ると、次の日高厚賀ICまで。その後、比宇厚賀線(北海道道208号)を北上して新和へ至るというとてもシンプルで早いルートとなりました。これはかなり便利です。ただSNS界隈では、「事故が起きたら最後、動かない……」という少し笑えないリスクもあるにはあるのですが、便利さが勝ります。
行き慣れた錦岡牧場新和育成場に到着したのは、9時過ぎ……所要時間が大幅に短縮されました。まずはご挨拶と、牧場内の高低差でいうところの奥にある「下」の厩舎に向かいます。前日は雨に悩まされた一日でしたが、この日は風もなく、少し暑く感じるほどの天気でした。

いつ来てもステキな並木の奥に、厩舎が2棟現れます。
以前と比較すると生産頭数を絞り、また育成を外部も活用するようになったことから、以前と比較すると新和に在厩する馬の頭数は絞られ、また馬たちも落ち着いた馬が多いからでしょう、とても静かな空気感を感じます。主に休養馬、功労馬、新繁殖牝馬たちが使用しています。
早速スタッフの方にご挨拶をさせて頂き、今年の牧場見学がスタートしたのでした。
牧草を食べ続けるアドホック――
朝の飼い付けが終わったところということもあり、馬たちは皆厩舎の中で飼い葉を食べている時間帯でした。
今年、新和で最初に会うことになったのは、現在休養中のヤマニンアドホックです。
Xにもポストしていましたが、写真を見返してみると口元に牧草をくわえた写真ばかりが保存されていました(^^ゞ 食事中に邪魔しているわけですから、彼を責めることはできません。とはいえ、牧場で過ごす馬の姿は競馬場で見る姿とはまた違っていて、落ち着いた雰囲気です。


今のヤマニン軍団は外厩を活用していることもあり、新和まで休養で戻ってくる馬たちはそれなりの休養期間が想定されています。アドホックは、ここでじっくり力を蓄えているところ。焦らず、復帰の日を楽しみに待ちたいと思います。ですが、私たちの彼への期待に触れないわけにはいきません。それは、ヤマニン軍団と錦岡牧場の歴史に関係しているからです。
アドホックの母系には、5代母に「ニシキノ」がいます。これはまだ苫小牧に錦岡牧場があった頃からの続く牝系であることを示しています。そしてこの牝系からは、古くはヤマニンファルコン・ヤマニンアーデンという重賞勝馬や、ヤマニンリコールといった活躍馬を送り出し、「牧場が苦しいときに走ってくれた」と例えられる印象的な歴史があります。そしてなによりも、2004年 優駿牝馬(GI)3着馬で、2005年には新潟記念(G3)、府中牝馬S(G3)と重賞2勝を飾った芦毛馬ヤマニンアラバスタを輩出します。


この世代の前後は、「牝馬のヤマニン」と印象的に語られることが多く、ヤマニンシュクルをはじめ、ヤマニンアラバスタ、ヤマニンアルシオンと、阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)や桜花賞(GI)に3頭を送り出したこの世代は、特に印象的です。芦毛馬だったこともありヤマニンアラバスタはネット上でも人気で、「アラバスたん」と呼ばれていました。
アラバスタは一時不調に陥ったこともありましたが、関係者が立て直しを図り復活を果たし、長く現役馬として活躍しました。もちろん大きな期待を持って錦岡牧場で繁殖入りしたものの、自身の病気もあり残すことができたのはダイワメジャー産駒のヤマニンアドーレという芦毛の牝馬1頭のみ――中央デビューを飾ったものの、8戦して4着が最高着順で岩手へ転厩。生涯で53戦8勝という成績で、この牝系がどうなってしまうのか。経済動物であることもあり、ファンたちは何も言い出せず、決断の時を待っていました。


そして2016年に現役を引退した一粒種、ヤマニンアドーレの姿は、錦岡牧場新和育成場にありました! 先代社長・土井睦秋氏が私に語ってくれました。繁殖として戻すべきか、とても悩んだ、と。決して成績は良くなかった。でも、苦しいときに牧場を助けてくれた牝系で、アラバスタのファンも多いことも知っている。だから、この血統を残す決断をした――と。この決断は、その後の錦岡牧場の新世代にとっても、大きな励みになった。
ヤマニンアドーレの産駒は、ヤマニンデンファレ、ヤマニンパニータ、ヤマニンアドホック、ヤマニンエイドロンと初仔から4世代連続で中央勝利を飾り、アドホックはラジオNIKKEI賞(G3)3着であり、現在3勝クラスの身。5世代目のヤマニンリンキングは現在のところ未勝利ながら2着があり、陣営は勝ちあがりを期して中央登録を抹消せずにいます。この活躍は、想定を超えるもので、古くからのヤマニンサポは、どうしても語りたくなってしまう牝系です。




こうして写真で見ると、芦毛が多く、気性的にはキツい仔が多いですね。アドホックも一時期爆走して耳目を集めていましたが、陣営の根気強い調教で今年3月の富里特別(2勝クラス)を勝利し、続く美浦S(3勝クラス)でも3着と力のあるところをみせてくれました。現在は再調整中で、のんびりと草を食んでいますが、陣営はもちろん復帰を目指して調整が進んでいます。ニシキノから続く物語を背負いながら、当人(当馬?)は黒鹿毛ですが、是非待っていてください。そして競馬場で姿を見かけたら、是非声援をお願いいたします。
今年の2歳・ヤマニンフィストも楽しみです。こちらは芦毛です。
地方での復帰を目指す ヤマニンサルバム
ヤマニン軍団に久々の中央重賞のタイトルをもたらしただけでなく、私としては牧場見学中にスタッフと重賞勝利の喜びを分かち合えることができた印象深い馬・ヤマニンサルバムも、新和で調整中でした。
現在、ヤマニン軍団を代表する牝系となったワンオブアクラインに連なる血統ですが、なかでもヤマニンザナドゥ-ヤマニンエマイユと最もメジャーな牝系の出身です。中日新聞杯(G3)、新潟大賞典(G3)勝馬。ヤマニン倶楽部的には、「5文字のレースに勝った仔」(^^ゞ


既に中央登録は抹消していますが、地方での復帰を目指して、現在も調整が続いているとのことでした。
まだ現役を続行しているというと、以前紹介したヤマニンゼストも長らく現役復帰を目指していましたが、今年遂に外厩に出ていったように、最後まで諦めないところもヤマニン軍団の魅力とも言えます。サルバムの勇姿がまた、中継で確認できる日が来ることを、是非待っていてください。
法政大学入り! ヤマニンクイッカー
休養馬として久々に会うことができたのが、ヤマニンクイッカーでした。粘り強く走っていた姿が印象的でしたが、この度、法政大学体育会馬術部へ転籍することが決まり、移動を待っている、とのことでした。法政大学体育会馬術部さんは、人と馬のウェルビーイングを実践されており、ヤマニン倶楽部で紹介させて頂いたこともあります。ヤマニン軍団の馬たちが引退後にお世話になっているケースが多く、「法政大学入り!」と聞くと、実は安心感が勝るというのがヤマニンサポーターの本音です。
もう移動したかしら……元気でいてくれれば嬉しいですね。

実は、法政大学体育会馬術部のピエロのサムさん(@daigohyougaki)からご連絡を頂き、2026年11月20日(金)~22日(日)に馬事公苑で行われる関東学生馬術自馬大会(主催: 関東学生馬術協会)に、ヤマニンの馬たちも出場するとのことなので、是非興味のある方は応援してください!
・ヤマニンマンダリン
・ヤマニンエミュ
・ヤマニンペダラーダ
・ヤマニンマヒア
期待馬なればこそ――ヤマニンソロイスト
続いて休養していたのが、ヤマニンソロイスト――。
馬名を聞いてすぐにピンときたとしたら、かなりのヤマニンサポーターですね!
ヤマニンソロイストは、ヤマニンパピオネ産駒の3歳牡馬で、現在調整中です。既に中央登録は抹消していますが、地方移籍を目論みます。ヤマニンサンパ(ポートアイランドS(L)優勝)、ヤマニンアンフィル(北九州記念(G3)2着)、ヤマニンウルス(プロキオンS(G3)・東海S(G3)優勝)、ヤマニンアルリフラ(北九州記念(G3)優勝)という4世代連続オープン入りを決めたきょうだいたちの半弟となります。これは期待が大きいのが判りますね。


こうして1頭ずつ写真を撮らせていただいていると、競走馬として過ごしていた時間、デビューを待つ間に考えたことなど、いろいろなことが頭をよぎります。
驚きのヤマニンセラフィム
そして次に見せて頂いたのが、厩舎の中にいる――ヤマニンセラフィム!?


ヤマニンセラフィムは、父サンデーサイレンス、母ヤマニンパラダイス。京成杯(G3)を制した、ヤマニン軍団を代表する功労馬です。栗毛のハンサムガイで、女性にはとても優しい漢です(何か表現がおかしい)。現役時代を知るヤマニンサポーターとしては、クラシックを夢見た一頭です。
もちろんこうしてあえることは嬉しいのですが、何よりも驚いたのが、厩舎にいること! こう書くと、「馬が厩舎にいるのは当たり前では?」と思われる方も多いと思いますが、馬って大きな動物なので、人間さまの言うことを聞く素直で頭のいい馬はともかく、気性が荒かったり、何考えているかよく判らない仔は――怖いですよ(^^ゞ その昔、ヤマニンパラダイスにサンデーサイレンスを種付けし続けた期間があり、その時期の新和で言われていたのが、「パラダイスの仔の近くには行かないで。手も出さないで」でした。毎年、でした(サンデーサイレンス×ヤマニンパラダイス産駒、怖いw)。見るからに厩舎内で暴れてるし……。個人的にはセラフィムは大人しい方に感じるのですが(凄い仔がいた……)、やっぱり独特で、人間を側に寄せ付けないところがあるのだそうです。確かにそういった一面は昔から感じていましたし、是非ホームページを検索してみて下さい。セラフィムが厩舎の中にいる写真、あんまりないです。むしろここのところ、ずーっと放牧地で一日過ごしていた
でも、お年を召されたのでしょうね。ガンダーラプソディと一緒に過ごしていた頃は威嚇されることもあったのですが、今ではすっかり大人しくなったそうで、人間さまが役に立つことにやっと気付いてくれたようです。この愛嬌の良さを見てください。
昨年と今年では、手入れがされている分若返った気がするよ、セラフィム~。このままイケメンジジイとして過ごして欲しいと、心から願っています。愛想は良いんだけど、側に寄せ付けないものがあったよね^^


やっぱり、手入れされている方がかっこいいよ!
ますますお若い重賞2勝馬 ジョリーダンス
そして、ジョリーダンス。
阪神牝馬ステークス(G2)2勝という実績馬で、今年2歳新馬勝ちしたタイヴァス、2勝目を挙げたテルヴィセクスの母にあたります。
芦毛ながら独特の明るい毛色は、今もジョリーダンスらしいものでした。明るい毛色の馬は珍しくありませんが、その中でも「ジョリーダンスらしい」と感じますが、皆さんは如何ですか?


新繁殖ヤマニンピエネネ、休養中のマノレア――
下の厩舎では他に、新たに繁殖入りすることになるヤマニンピエネネと、休養中のマノレアを見せていただきました。
ヤマニンピエネネは、ヤマニンシェリル-ヤマニンエマイユ-ヤマニンザナドゥ-ワンオブアクラインと遡る牝系で、未出走ながら牧場の期待が窺える血統です。


マノレアは、岩手、門別、園田でも走った馬ですね。休養中でしたが、現在は地方登録を抹消しているようです。


この場所で過ごす馬たちを一頭ずつ見ていると、牧場には競馬場とは違う時間が流れていることを改めて感じます。
走っている姿を知っている馬も、そうでない馬も、こうして目の前にいると、それぞれの時間を重ねてきたことが伝わってくるようです。
次は1歳馬たちへ――
下の厩舎での見学を終えると、次は事務所近くの厩舎へ向かいました。
そこには、これからそれぞれの育成牧場へ旅立っていく1歳馬たちが待っています。
まずは、1歳牝馬たちとの対面です。
前回:9/3(2) 門別編
次回は……9/4(2) 1歳牝馬編デス!

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