大外枠の不利も、自らのリズムで手にした2つめのタイトル!
2024年5月5日 新潟競馬場で第46回 新潟大賞典(G3)が開催されました。
昨年、オクトーバーS(OP)から中日新聞杯(G3)と連勝でヤマニン軍団12年ぶりの重賞制覇を飾ったヤマニンサルバム。コンビを組んだ三浦皇成騎手によって新味を引き出されたことで、今年はより大きなタイトルへ向けて始動しました。が、前走・金鯱賞(G2)では他馬に煽られる形になり自らのリズムを崩し10着に敗れてしまいました。中村調教師も「1~2角の入りが悪く、折り合いを欠きました。左回りでもワンターンの二千でその点がどうかですが、自分のリズムで走れれば。」とコメントしていました。
当時、三浦皇成騎手のお手馬にはヒヤシンスS(OP)を豪快な大外一機で快勝したラムジェット(牡3 栗東・佐々木)がおり、米・チャーチルダウンズ競馬場で5月4日に開催されるケンタッキーダービー(GI)へ直行することが発表されていました。新潟大賞典を目指すヤマニンサルバムに乗れないことは明確で、鞍上は喫緊の課題でした。その後ラムジェットはユニコーンS(G3)で連勝を飾りましたが、残念ながらポイントの関係でケンタッキーダービー出走は叶いませんでしたが。
ヤマニンサルバムの鞍上に指名されたのは、花の35期生の一員として知られた斎藤新騎手でした。近年、ヤマニン軍団の主戦厩舎とも言える活躍をしている栗東・斉藤崇史厩舎、美浦・辻哲英厩舎にならんで、中村厩舎の騎手起用は独特で、意外な選択でした。斎藤新騎手がヤマニン軍団に騎乗した記憶がほぼ思い出せないレベルです。これは推測になりますが、所属する栗東・安田隆行厩舎解散に伴い3月からフリーとなった斎藤新騎手のもとに集まった新たな依頼の一つだったと考えられますし、なにより指揮官の慧眼を証明することになりました。
昨年の「雨男」が嘘のように晴れ上がった新潟競馬場のパドックには、黒光りするヤマニンサルバムが姿を現しました。いつも通りギリギリのテンションながら、前走と異なり間隔を詰められたこともあり、-8kgとなる504kgの馬体は、好調さを伺わせました。前走若干重めを危惧されていたこともあり、仕上がりは良さそうでした。
レース後のコメントで中村調教師は、
中村直也調教師
https://www.radionikkei.jp/keiba_article/news/post_32131.html
「(逃げるのは)想定まではしていませんでした。ジョッキーには、ゲートを出た感じで臨機応変に競馬をしてほしいと話していました。」
と語っており、テン乗りとなる斎藤新騎手にレース運びを一任していたことが判ります。このことが、2度目の重賞制覇に繋がったことは言うまでもありません。結果を残している騎手不在のなか、騎手起用の冴えを感じずにはいられません。
新潟競馬場右奥のポケット、大外枠8枠16番からの絶好のスタートを決めると、先頭を伺う斎藤新騎手とヤマニンサルバム。レース前から逃げると思われたセルバーグが、後方からの競馬となる。内からハナを主張するデビットバローズの外目につけたものの、力んで走っていることとペースが遅めであることから、後続に3馬身差あけてハナに行くことを選択。向こう正面で先頭に立つと、自らのペースで時計を刻みました。大外枠は不利でしたが、スタートから直線長い新潟であることはプラスに働きました。
3角入口での1000mタイムが1.01.6とスローで流れていましたが、ここでセルバーグが我慢できないとばかりに先頭を奪いにコーナーへ。しかしヤマニンサルバムは先頭を許さず直線へ。荒れた長い直線を良い馬場を選んで直線に向いたヤマニンサルバムと斎藤新騎手は、絶妙のペースで後続馬の脚を消耗させながら、自らの追い出しは我慢。残り200mで外から33.6秒の末脚を繰り出したキングズパレスとたたき合いとなったものの、ハナ差凌いで見せ、中日新聞杯(G3)に続く重賞2勝目を飾りました。
レース後、斎藤新騎手は次のようなコメントを残しています。
斎藤新騎手
https://www.radionikkei.jp/keiba_article/news/post_32131.html
「一週前の調教からコンタクトを取らせていただいて、本当にすごく良い状態だと感じていました。初騎乗で、チャンスをいただいた馬主さんをはじめ、中村先生、たくさんの方たちに感謝の気持ちでいっぱいです。前々走の中日新聞杯を勝ったように、力があることはわかっていましたし、ヤマニンサルバムの力を出して、うまくエスコートできれば勝ち切れるのではないかと、自信をもって臨みました。大外枠で内を見ながら、思ったよりペースが遅く、番手に控えた時に力むところがあったので、このペースならと思ってハナを切る選択をしました。直線に向いて、十分な手応えがありましたし、追い出しての反応も良かったので、馬を信じて追うだけでした」
鞍上のヤマニンサルバムを信じた好判断が、レース結果に繋がりました。
中村調教師も「(逃げるのは)想定まではしていませんでした。ジョッキーには、ゲートを出た感じで臨機応変に競馬をしてほしいと話していました。向正面を走っていて2番手にいた時、力んでいたので、無理に抑えるより前に行ったのが結果的に良かったです。」と語っていたことは、既述通りです。
中村調教師はいつものように、次走に関しては口をつぐみましたが、「普段はそこまでバランスは悪くないので、左回り限定という感じではないのですが、結果を出していますからね。右回りでも走れないことはないですよ。」と右回りへの再挑戦を念頭に置いたコメントを残しており、今後の選択が待たれます。
徐々に力をつけていることが窺えるヤマニンサルバム。これまでの持ち時計を考えれば、ここはしっかりと実力を出し切ることができたのではないでしょうか? 秋へ向けて楽しみになりました!
蛇足です。
ヤマニン倶楽部 管理人・なおやは、錦岡牧場さんの特別のご許可のもと、今年も新冠町の錦岡牧場で取材させて頂いておりました。昨年は、ちょうど牧場見学から東京に戻る日程を組むことができたので、新潟大賞典(G3)応援のために新冠から新潟へ転戦しました。しかし、今年は日程の中日と言うことで現地入りできず、錦岡牧場新和育成場で若手スタッフと共に事務所で応援していました。丘の上の寮まで聞こえるほどの雄叫びを私たちがあげていたと、牧場スタッフの皆さんが証言しています(;^_^A ヤマニン軍団を育んで下さるスタッフの皆さんと喜びを分かち合えたことが、とてもとても嬉しい出来事でした。
帰りにお花屋さんにお電話して、準備して頂いたのがこちらのお花です。
「ちょうど今から、錦岡牧場さんにお届けするところだったので、お持ちしましょうか?」
さすが馬産地のお花屋さん。とはいえ、私たちも現地にいるので、私たち自身の手でお持ちしたかったので遠慮致しまして、翌日、改めて自分たちの手でお届けすることができました。これまでで初めてのことなので、直に喜んで頂けて、私たちも嬉しかったです。
――車で運ぶの大変だったので、花屋さんはエラい、と思いましたw
最後に、以上の理由で現地応援ができなかった訳ですが、CKさん (@CK_Ariaze) が長駆して新潟競馬場からレポートして下さいました。現地写真はCKさんのご提供です。いつもありがとう、感謝してます!^^
[了]
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